松久淳オフィシャルサイト週松(自前)表紙 > トップ > 週松プレイバック  HBS おかしい二人

 

*いまではたんなるインフォメーションコーナーになっている「HBS」。ですが週松創刊当初から、松久淳+田中渉の対談が頻繁に載っていました。対談といっても全部、私松久が勝手に創作したものなんですけどね(田中は週松に載ってから初めて読むという)。
週松創刊は2000年7月で、松久田中のデビュー作「天国の本屋」は2000年12月発売。対談は発売前の執筆時から行われ、やがて発売となり、2002年に思わぬヒットとなり、2004年に映画化されるまで、約40回続きました。
そのうち2回分は、「ヤング晩年」にも収録されています。
今回はその最初も最初、2000年に公開していたもののダイジェストをお送りします。

 

2011年7月30日再公開

松久田中のおかしい二人●2000年分ダイジェスト

その2●で、どこまで進んでるの?(00/8/20)

松久 でさ、結局どこまで進んでるのよ、『天国の本屋』は。

田中 かなり、いい感じになってきてるよ。

松久 ……それ、進んでないってこと?

田中 いや、いや、だから、だから止まってないってことよ。

松久 でさ、なんだっけ、あの出版社……。

田中 ……みのり書房?

松久 『OUT』の増刊号かよ! だいたいもうないよ、『OUT』!

田中 ……だったらいいなぁって。

その3●出版決定ってホント?(00/8/30)

松久 なんか風の噂で聞いたんだけどさ。 『天国の本屋』が単行本発売が確定したんだって?

田中 まったく誰がそういう余計なこと吹き込んじゃうのかなあ。極秘で進めてる話なのに。

松久 極秘ってオレ、原作者じゃんかよ!

田中 あれ、こういう話って原作者にいちばん極秘にしておかないといけないんでしょ。

松久 普通いちばん最初に伝えるだろうが!

田中 あ、そうなんだ。ほら、オレ出版界のことよくわかんないからさ。

松久 ……で、どこから出るのよ、その本。

田中 えーと……ブックファーストとか紀伊國屋とかかな?

松久 どこで売るか聞いてんじゃないよ! 出版社だよ出版社。先に言っておくけど「みのり書房」っていうネタはなしだぞ。

田中 あ、今言おうと思ってたのになあ。えーとね、じゃあ……。

松久 「じゃあ」じゃないだろうが。何いま一所懸命笑える出版社探そうとしてるんだよ、その頭の中で。

田中 徳間書店。

松久 マジで? すごいじゃん。

田中 の、アニメージュの袋とじ付録。

松久 いいかげんにアニメ雑誌から離れろよ。じゃあさ、タイトルどうする? 『天国の本屋』は一応仮題なんだけど。

田中 このままでいいんじゃない? 略して「てんぽん」。それとも何か案があるの?

松久 ほら、本屋が舞台で主人公が客相手に本を朗読するって設定でしょ。

田中 まさか……。

松久 『朗読者2』ってどうよ。でもオレたちの方があの本より早かったんだけどなあ。

田中 早かったけど君もオレに負けず劣らずひよってるよ。それやばいでしょう、さすがに。そうだなあ、一応「大人も読める児童書」のライン狙ってるから……『ハリー・ポッターと天国の本屋』っていうのにしとこうか。

松久 そのなんのてらいもなく大物に寄っかかろうとする感じ、すごく好き。

その5● いよいよ発売決まったらしいね。 (00/10/25)

松久 またまた風の噂で聞いたんだけどさ。

田中 何聞いたか知らないけど、どうして君に吹き込むかね、天本(てんぽん)プロジェクトは極秘だっていうのに。

松久 ……オレが原作者だからじゃないのかなあ。

田中 原作者ってえらそうだなあ。

松久 ……普通、いちばんえらいんじゃないのかなあ。

田中 そんなことないと思うんだけどなあ。

松久 そうかなあ。

田中 そうだろ、きっと。

松久 うん、じゃあ……。

田中 また何かあったら、ということで。

松久 おつかれさまー……ってこら。

田中 忙しいんだよ。だから何、今日の議題は。

松久 いや、風の噂も何もさっき、ようやくオレも版元の人に会えたからね。

田中 大事な出版打ち合わせに何で来るかね、君は。

松久 ……オレが原作者だからじゃないのかなあ。

田中 原作者ってえらそうだなあ。

松久 ……普通、いちばんえらいんじゃないのかなあ。

田中 そんなことないと思うんだけどなあ。

松久 そうかなあ。

田中 そうだろ、きっと。

松久 うん、じゃあ……。

田中 また何かあったら、ということで。

松久 おつかれさまー……ってさっきと同じだよ。

その6●イラストができてきたらしいね。(00/11/3)

松久 風の噂で聞いたんだけどさ。

田中 って今日、朝からずっと一緒にいたじゃん。噂でも何でもないよそれ。

松久 祝日だってのに早朝から新木場なんて今後一生行かないような場所に呼びだされてね。

田中 10時は早朝じゃないし、そもそもオレが君んちの前まで迎えに行っただろうが。

松久 ようやく原作本の挿絵があがってきたらしいじゃん。 なかなかいいね、このイラスト。

田中 でしょ?

松久 ふ〜ん。で、これ誰が描いたの? 有名な人?

田中 教えない。

松久 即答するなよ。オレ原作者だよ。

田中 原作者ってえらそうだなあ。

松久 普通、いちばんえらいんじゃないのかなあ……ってそうじゃなくてさ、本当に誰なのよ? ベテランそれとも新人?

田中 う〜ん、新進気鋭の中堅、って感じかな。

松久 そんな矛盾したキャッチねえよ。誰なんだよ、教えろよ。

田中 あのね、別にネタのために隠してるんじゃなくて、これホントに公表できないんだよ。

松久 どういうこと?

田中 だから……(ナイショ話)……なんだよ。

松久 ……マジで?

田中 マジ。

松久 本気と書いて。

田中 マジ。

松久 犯人と書いて。

田中 ホシ。

松久 ……そりゃ言えねえや。言えねえどころかそれ、本のクレジットにも入れられないじゃん。

田中 でしょ。もうノンクレジットだから、挿絵のとこ。

松久 やっちゃったね。

田中 やっちゃったでしょ。

松久 発売3か月後くらいだな、言えるのは。

その7●表紙ができあがったらしいね。(00/11/18)

松久 風の噂で聞いたんだけどさ。

田中 今度は何だよ。

松久 なんかさ、『天国の本屋』の表紙ができてきたらしいじゃん。

田中 ……らしいじゃんってさ、ラフが4通り出てきて「どれにしましょうか」って版元の人と話してるとき、いちばんえらそうに「これがいい」って選んでたの君じゃん。

松久 まあね、ほらこう見えてもオレって……どう見える?

田中 姿勢と根性が曲がりきった野村萬斎。

松久 そうかなあ。オレは自分のこと「ものすごく弱そうな桜庭和志」だと思うんだけど。

田中 君が誰に似てるかなんて話どうでもいいんだよ。「ずうずうしい中村俊輔」とかだろ、どうせ次に出てくるの。

松久 いやあ、ついに流行りだしちゃったね、オレみたいな顔。

田中 流行ってねえよ。で、何なんだよ今日の話は。

松久 いや、表紙が思いのほかいい出来上がりだったんでびっくりだよね。

田中 確かに。最初は絵は使わないで、タイトルだけの上品な本にしたいっていうのがこっちの希望だったんだけどね。

松久 そしたらイラスト入りのも案であがってきて、比べたらこっちの方がよかった。

田中 やっぱイラストレーターがいいんだよ。

松久 で、そのイラストレーターって誰?

田中 言わない。

松久 言えない、でしょ。わざと聞いたんだよ。でもさ、ゲラ状態になって改めて読み返してみたんだけど、これマジでいい話だわ。

田中 オレたち2人が言い合ってもしょうがないけど、いい話なんだよ。やっぱ原案の良さかな。

松久 いや、原案でイキになったのって、主要人物3人の名前と、天国が舞台ってことと、本を朗読するシーンを入れる、ってことだけだからね。やっぱ原作者の力でしょ。

田中 いや、その設定がポイントだったんだよ。シノプシスの勝利って言うのかな。

松久 シノプシスなんて跡形もなく変えちゃったからね、まあそんなのあってないようなもんでしょ。

田中 ……オレたち2人で言い合いしてもしょうがないんだけどね。

松久 ……そうだね。

その9●発売まであと1週間だね。(00/12/7)

松久 風の噂で聞いたんだけどさ。

田中 『天国の本屋』の単行本の件なら、12月15日頃発売で定価1000円で決まってるからね。

松久 あらら、またまた今日も急いでたりするの?

田中 たいへんなんだよ、師走ともなると。

松久 ああ、クリスマスに向けて例年どおり不毛な努力をするわけだね。

田中 そのとーり。

松久 あ、否定しないんだ。

田中 というわけでさ、君とこんな築地のうらぶれた定食屋でオムライス食ってる場合じゃないんだよね。でさ、今日は何なの。

松久 いや、今日の用件は君の最初の発言で終わってるんだけどね。

田中 じゃあもう帰ろうよ。クリスマスのリサーチ大変なんだよ。

松久 一人者はクリスマス大変だね。

田中 ほっといてくれ。

その10●本の感想文を募集したいところだね。(00/12/14)

松久 風の噂で聞いたんだけどさ。

田中 「へー、何を聞いたんだい」。

松久 その棒読みのリアクションやめろよ。

田中 あれだろ、『天国の本屋』がいよいよ発売されたって話だろ。

松久 わかってんじゃん。今日明日あたり、もう書店に並んでるんでしょ。

田中 君も書店回りからたたき上げた出版人なら、まず自分で確認してこいよな。どの書店にどのくらい入荷されてて、1日でどのくらい売れたかチェックしなきゃ。

松久 いや、そういう市場調査的なことはやっぱり電通とか博報堂とかのマーケッターがさ。

田中 君、マーケッターの意味わかってないでしょ?

松久 失礼なこと言うなよ。広告の専門用語くらい知ってるぞ、電通ヤングアンドルビカムとか。

田中 それ専門用語じゃなくて社名だよ。怒られるぞ、そこの社員に。いいから本題に入れよ。忙しいんだからさ。

松久 あれ、まだクリスマスの予定が決まってないの?

田中 いきなりそういう本当のことを織り交ぜないでくれる?

松久 あ、図星だったんだ。♪きっと君は来な〜い〜ひとりきりのクリスマスイブうぉおおおサイレンナ〜イ♪

田中 歌わなくていいよ。

松久 ホーリーナ〜イ♪

田中 ナ〜イじゃねえよ。しかもちょっと似せようとして変なこぶし回すなよ。

その11●ミスを見つけちゃったんだよね。(00/12/21)

松久 なんか風の噂で聞いたんだけどさ。

田中 早く用件を言ってくれよ。

松久 どうやらミスがいっぱいあるんだよね。

田中 マジ? クレームいっぱい来てるとか? っていうか、字の間違いとかは君にゲラチェックを一任したわけだからね。それは君の責任だよ。

松久 うんにゃ。本文に間違いなんかひとつもないよ。この俺様の原稿でこの俺様がチェックしたんだから。

田中 じゃあ何? 他にどこが間違うとこあるっていうんだよ。

松久 イラスト。

田中 え? イラストに間違いも何もないだろ?

松久 あるんだこれが。ひとつずつ挙げていってやろうか。言っておくけどオレのチェックは針の穴を通すくらいしつこいぞ。

田中 なんかそのたとえ、間違ってるような気がするんだけど。

松久 イラストレーターの正体は「謎」って言い張るんなら、代わりに君にちゃんと説明してもらうぞ。

田中 わかったよ、どこだよ。

松久 まずはP15。天国の本屋のイラストがあるよな。

田中 ああ。で、これが何?

松久 この段階ではさ、まだ「開店前」なんだよね。なんで客がすでに立ち読みしてるの?

田中 ……店員なんじゃない?

松久 あのね、この段階で話してるさとし、ユイ、ヤマキの3人以外は、遅番のアヅマとナカタしかいないって設定になってるんだけど。

田中 じゃあこの絵の2人がアヅマとナカタなんじゃない?

松久 その2人はP31に出てくるだろうが。全然違うよ、どう見たって客だよ。

田中 「お客さん、困りますね。まだ開店前なんですよ」

松久 いきなり登場人物のフリするなよ。

田中 いいじゃんか、このくらい。イメージカットなんだよ、きっと。

松久 じゃあいいよ、そのP31のアヅマとナカタの絵はどうなってるのよ?

田中 どうなってるって何が?

松久 左がアヅマで右がナカタだろ。でさ、アヅマはちゃんとHBS(ヘブンズブックサービス)のエプロン着てるじゃん。でもさ、ナカタが着てるのこれ何?

田中 ……それもHBSのユニフォームなんだよ。

松久 ロゴ入りブルゾンがあるなんてどこにも書いてないけど。

田中 原作に書いてないとこまでこの世界を読み取ったんだね、きっと。

松久 読み取りすぎだよ!

田中 いいなあ、オレも欲しいなあ、このブルゾン。

松久 いらねえよ、そんなの。じゃあ次は決定的なこと言うぞ。P42の男の子のイラストだよ。

田中 どれどれ……別に何の問題もないじゃん。『シューレス・ジョー』を読んでくれって言った子だろ?

松久 大問題だよ。いいか、この子のことはな、「膝にかさぶたを作ってヤンキースのキャップをかぶった小学生ぐらいの男の子」って書いてあるんだよ。

田中 あのね、キャップのロゴはつぶれてるけどちゃんとヤンキースなの、これ。

松久 違うよ。「膝にかさぶた」って書いてるのにこの子、長ズボンはいてるんだけど。

田中 ……………あ。

松久 どうしてかさぶたがあるってわかるわけ?

田中 ……この後でこの子はな、おしっこもらしてズボンを脱いだんだよ。で、それで膝にかさぶたがあるってわかったって寸法さ。

松久 寸法さ、じゃねえよ。無理がありすぎるよその設定。んじゃ次いくぞ。

田中 まだあるのかよ。

松久 まだまだ。P91でビルの屋上にいるユイの絵があるよね。

田中 ああ、いい絵だよな。

松久 このビル何階建て?

田中 ……いち、に、さん……4階建てでしょ。見たとおり。

松久 これから飛び降りようって奴が4階程度のビルに行くか? 死ねないよ、そんな高さ。

田中 ……あのね、君は知らないと思うけどこのビル、1フロアの天井が20メートルくらいあるんだよ。

松久 なるほど、それで納得がいくじゃん、っていかねーよバカ。

田中 いかない? おかしいなあ。

松久 次はP113。

田中 まだあるのかよ。

松久 まだまだ。これさ、さとしがこっちの世界に戻って開いた本屋だよね。

田中 そうだよ。郊外の商店街にある何でもない本屋、イメージどおりじゃん。

松久 2階がないんだけど。

田中 は?

松久 本屋の2階がさとしの自宅、ってことになってるんだけど。

田中 はあ。

松久 はあじゃねえよ。

田中 これね、手前の建物で見えないだけで奥にあるんだよ、2階。

松久 ずいぶん奥に細長い建物だな、おい。

田中 流行ってるらしいよ。安藤忠雄が建てたんだって。

松久 余計なこと言ってごまかすなよ。ホントはまだ細かいこと言えばキリがないんだけど、まあ今日はこのへんにしといてやるよ。

田中 まあどうでもいいことだったね、全部。

松久 まあどうでもいいって言えばどうでもいいんだけどね。

田中 じゃあ最初から言うなよ……。