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「ストーリー&テリング」文庫版

松久淳+田中渉/著 小学館文庫/刊 定価560円(税込) 2010年9月7日発売

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 コンビの漫画家、絵門千明と麻生藤太。30代後半のシングルファーザーと独身貴族の二人が、30代半ばの二人の女性に出会うところから話は始まります。彼女たちの名は梶山真智子と太田奈津。シングルマザーの小学校教師と色っぽい女社長。

 お話は千明くんと真智子さんを中心に、麻生と奈津、また千明と真智子のそれぞれの子供・直太郎と愛、そしてなんかどっかで聞いたような人々が登場してきて進んでいきます。さてさて、最悪な出会いと、とても恋に落ちるような状況ではない千明くんと真智子さんは、どうなっていくのでしょうか。

 というお話です。軽くさっぱりと読んでいただければ嬉しいです。

 なお文庫版には特別付録として、『「ラブコメ」「ストーリー&テリング」小ネタ大事典』が載っています。「ストテリ」と、前作にあたる「ラブコメ」にこれでもかと注ぎ込まれている(若い人にはちょっとわかりづらい)ネタの数々。文庫化記念で、まとめて解説します。

 

ストーリー&テリング

松久淳+田中渉/著 2006年7月25日発売 小学館 1365円(税込)

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 松久淳+田中渉のデビュー5周年記念作品兼第9作目記念です。中途半端。おそらく「大人の『ラブコメ』」ということになるんでしょうが、『ラブコメ』とはまた違うものを書いたつもりではいます。

 初出/女性セブン誌2005年9月29日売号より06年3月9日売号まで連載(全21回)。 

 

CAST (in order of appearance)

超一流放送作家兼そこそこ漫画原作家 麻生藤太(37)
そこそこイラストレーター兼そこそこ漫画家 絵門千明(37)
物語にあんまり関係ない担当 石川和夫(37)
まいっちんぐマチコ先生 梶山真智子(34)
そこらの若い女に負けてたまるもんですかの 太田奈津(35)
Uターン禁止を軽く無視するタクシー運転手 佐々木さん(48)
どうやら本業は小説家らしい アモーレ長男(37)
どうやら本業はCMディレクターらしい アモーレ次男(37)
どうやら本業は映画宣伝プロデューサーらしい アモーレ三男(37)
可愛いけどかなりびびりだと思うんだよねな 絵門直太郎(5)
可愛いけどちょっと生意気だと思うんだよねな 梶山愛(7)
引越運がまるでない隣の部屋の 渡辺さん(38)
色っぽい奥さんに寛容な歯科医 太田勝彦(41)
「ラブラブぶらぶら」にサインを頼む美人ОL 野沢さん(26)
「ラブラブぶらぶら」に詳細な絵を要求する長髪男 北岡くん(22)
花やしきの無精髭の係員 浅野さん(29)
あろは寿司二号店の素敵な若旦那 宮本圭太(34)
あろは寿司常連客にして超人気声優 西島涼平(31)
おそらくLEОN愛読者の真智子の元夫 松坂守(38)
どこかの「外国」に住んでいるらしい千明の元妻 伊東冴子(35)
上野動物園にいた口の悪い女 松田真紀恵(26)
その口の悪い女のどうやら恋人らしい 村田美晴(29)
千明の「ママ」こと 絵門玲(59)
人気声優の妻(元キャバ嬢) 西島涼子(22)
こんにちは赤ちゃん 絵門リサ(0)

なんか見たことある名前がちらほらと。『ラブコメ』の巻末クレジットと合わせてお楽しみください。

*写真は単行本オビをはずした表紙です。

 

reactions

大人の恋は、つつましやかで、気遣いで、痒いところに手が届くというか、とにかく、相手を思いやる余裕があって、どこまでも優しい。決して「誰もが羨む」にはならなくても、「誰もが微笑む」にはなるのだなあと、そんなことを思いました。

「寝ている子供を気遣って沸騰したヤカンの熱気を真っ先に逃がす」なんて、子供がいる人が読んだら尚更「わかるわかる」でしょうね。自分の気持ちだけで突っ走ることが出来ないところが切ない大人のラブコメだなあと思いました。

とりえあず、こんなにリアルに「ぎっくり腰」を書いた小説は本邦初でしょう。

松久+田中作品は毎回そうですが、今回は特に、脇キャラが絶品と私は思いました。絵門&まいっちんぐ真智子も不器用な素敵っぷりがあってこそですが。

絵門の母親の言葉。これはすごくいいセリフですね。ここだけダンナに音読して聞かせたら「・・・いいこと言うなあ」としみじみしていました。思わず今の夫婦関係に当てはめながら、噛み締めるように読んでしまいました。

それにしてもクロエのワンピースに着替えるのが寿司屋のトイレとは! リアル過ぎです(笑)。

こういうニュアンス、若い奴等にはわかるまい・・・・と、普段、私をおばさん扱いしているギャルたちに少しだけ優越感を覚えました。

ところで、10代、20代の子達は、この2人の恋愛をどう見るんだろう?「30代にもなって、何照れてんだ?」って突っ込まれたら、けっこう悲しい。勢いで突っ走れない分、まどろっこしいのだよ、30代の恋愛は。

あと直太郎が最高。なんて純粋! なんて可愛らしい! 自転車で疾走するシーンでは、涙が出そうでした。彼が一番いい男になると思います。

「ラブコメ」読んだときは、本当にそう思ったんだけど、「ストテリ」読んで「人はいくつになっても誰かを好きになれば胸がきゅーってなる」んだと気づかされました。まだ、きっと大丈夫。娘にも負けられない。